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「勿忘草(わすれなぐさ)の咲く町で」夏川草介 [本]


勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~

勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~

  • 作者: 夏川 草介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 単行本

「神様のカルテ」シリーズの著者です。
現役の医師をしながら夏目漱石に憧れて小説も書かれています。
今回は新シリーズになるのでしょうか?
看護師 月岡美琴は3年目。
研修医 桂正太郎は長野県の大学医学部を卒業して東京出身にもかかわらず長野にとどまって研修医として働き始めました。
親が花屋というだけあって花に詳しくあちこちに花の話題がちりばめられています。それもこの小説のポイントですね。
著者自身も恐らく花に詳しそうで、名前に「草」が入っているのは「草枕」が由来だけではないのかもしれません。
さて本題
病院の小説だけに病院態勢のことだけでなく「死」もテーマになります。
印象深かったのは「死神」と言われている谷崎医師。
治る見込みのない80歳以上の患者には過剰な治療はしないという信念?哲学?を持っています。
それはどこかで非情とも受け取れるのですがそこに至る経緯を知ると少し納得します。
でも決して治る見込みのある患者まで切り捨てているわけではないことを最終章で示していて救われます。
その最終章で95歳の女性の胆石を取るか取らないかという選択を迫られます。患者は手術を望んでいません。
でも彼は彼女の中にまだ生きる力が衰えていないことを知る機会を持ちあえて難しい手術をすることを選択します。
一方で入院している祖父に対して「とにかくできる限りのことをしてくれたらそれでいい。」という孫の言葉。
彼はそれに対して違和感を持ちます。それはどこから来る違和感なのか?
その患者はほとんど生かされているだけ。それに対して医療をするのではなく「一緒に看取りましょう。」と提案します。ただその提案も普通なら反感を買い納得してもらえないと思いますがそこを納得させるだけの医師としての思いが伝わったのでしょう。
誤嚥で亡くなった患者の家族に対して説明をして納得してもらったけれど患者の義理の弟からクレームがでたのです。
それに対して病院は訴訟を回避するべくお金で解決しようとします。
看護師の美琴は病院側のミスではないのに今回お金で解決したら今後ずっとそういう対処が当たり前になってしまうと会議で異議を唱えました。
また、お見舞いの花を禁止しようと理事会が動くのですがこれもまた撤回させます。
花の癒しの力を信じたいです。
余談ですがスピードスケートの小平奈緒選手が所属している相澤病院をモデルにしたテレビドラマが少し前に放送されてました。
この病院に著者が勤めていたということもこのドラマ化に際し知りました。



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